「なんとなく調子が悪い。」
でも、病院へ行くほどではない。
健康診断も異常なし。
だから、
「歳かな。」
「疲れているだけかな。」
そんなふうに、自分を納得させてしまう。
実は、この「なんとなく不調」を放っておかないのが東洋医学です。
西洋医学が病気を見つけるのが得意なら、東洋医学は「病気になる前」を見つけるのが得意です。
これを東洋医学では「未病(みびょう)」と呼びます。
「なんとなく」は、体から届く小さな手紙
人の体は、本当によくできています。
ある日突然壊れることは、実はあまりありません。
- 肩がこる。
- 眠りが浅い。
- 疲れが抜けない。
- 胃が重い。
- 朝起きるのがつらい。
- イライラしやすい。
そんな小さなサインが何か月、何年と積み重なった先に、大きな不調や病気につながることは珍しくありません。
ところが私たちは、この手紙を驚くほど上手に無視します。
スマホの充電が20%になれば、慌てて充電器を探します。
でも、自分の体力が20%になっても、
「充電はまだ大丈夫。もう少し頑張ろう。」って思ってしまう。
……なんなんでしょうね(笑)。
私も、未病のど真ん中にいた
実は私もそうでした。
東京で鍼灸院をしていた頃は、休みは日曜日だけ。
昼ご飯はコンビニのおにぎりやカップラーメン。多かったなぁ。
夜は、
「アルコールでお腹を消毒。」
……そんな言い訳をしながら毎晩飲んでいました(笑)。
- 疲れが取れない。
- お酒で眠る。
- 翌朝も疲れている。
- また夜、お酒に頼る。
今思えば、東洋医学を仕事にしている人間とは思えない生活でした。
でも当時は、それが普通。
東洋医学では、まさにこういう状態を「未病」と考えます。
まだ病気ではない。
でも健康とも言えない。
だからこそ、この段階で整えることが何より大切なのです。
東洋医学で見えてくる「からだの声」
一番怖いのは、「慣れる」こと
本当に怖いのは、不調そのものではありません。
一番怖いのは、その状態に慣れてしまうことです。
そして、本来の良い状態を忘れてしまうこと。
「肩こりは昔から。」
「眠れないのが普通。」
「疲れていて当たり前。」
そうやって脳が覚えてしまうと、体が悲鳴を上げていても、それを「普通」として受け入れてしまいます。
鍼灸を受けた患者さんから、
「先生、最近なんだか体が楽なんです。」
「これが普通だったんですね。」
と言われることがあります。
私は、その言葉を聞くたびに嬉しくなります。
それまでずっと、不調が標準設定になりすぎて、「楽な体」を忘れていただけなのです。
人間の順応力は、本当にすごい。
戦後の焼け野原から日本が復興できたのも、この力があったからでしょう(違うか)。
私たちは、環境に順応する能力の高い、とてもたくましい生き物です。
でも、その素晴らしい能力を「不調に慣れること」に使ってしまうのは、少しもったいない。
頑張ることは素晴らしい。
でも、頑張り続けることだけが素晴らしいわけではありません。
鍼灸治療は、新しい体をつくるものではありません。
本来の心地よかった体を、思い出すお手伝いをするものだと私は思っています。
一度その感覚を思い出すと、人は不思議なもので、
「今日は少し無理をしたな。」
「そろそろ休もう。」
「今日は早めに寝よう。」
と、自分の体の声に耳を傾けられるようになります。
良い状態を知ると、人は自然と、その状態を保とうとするのです。
体は意外と、おしゃべりです
七施鍼灸院では、勝手に「ポジティブキャンペーン」を開催しています(笑)。
もちろん、「何でも前向きに考えよう」という話ではありません。
熱が出たら、
「体が頑張ってくれているんだな。」
眠くなったら、
「今日は早く寝ろってことか。」
疲れたら、
「少し休めっていうサインだな。」
痛みが出たら、
「ちょっと立ち止まれってことかな。」
そんなふうに、体の声を少しだけ翻訳してみる。
体は意外と、おしゃべりです。
でも私たちは、
「仕事があるから。」
「子どもがいるから。」
「今は忙しいから。」
そう言って返事をしないことが多い。
体からすると、
「だから前から言ってるじゃん。」
なのかもしれません(笑)。
東洋医学は、「悪いところを探す医学」というより、「良くなろうとしている体を応援する医学」だと私は思っています。
だから時々、患者さんよりも私のほうが、その人の体を信じていることがあります。
朝の目覚めは昨日の通知表
「ちゃんと寝たはずなのに、朝から疲れている。」
そんな日が続くと、「もう歳だから」と思ってしまいがちです。
でも、30年以上鍼灸師として多くの方を診てきて感じるのは、「疲れている人」よりも、「回復できなくなっている人」のほうがずっと多いということ。
東洋医学では、症状だけでなく、その人が本来持っている「回復する力」を大切に考えます。
朝の目覚めは、昨日の通知表。
疲れない体を目指すのではなく、疲れてもちゃんと回復できる体へ。
そんな東洋医学の考え方を書いてみました。ぜひご覧ください。
「まだ病気じゃない」は、「まだ元気になれる」ということ
東洋医学の得意なことは、「病気」を見つけることではありません。
病気になる前の、小さな変化に気づくこと。
それが「未病」という考え方です。
広島県安芸郡府中町の七施鍼灸院は、病気を治す場所というより、
「まだ元気になれる体ですよ。」
そうお伝えする場所でありたいと思っています。
もちろん、無理に前向きになる必要はありません。
疲れたら休む。
眠くなったら寝る。
痛みがあれば立ち止まる。
体から届く小さな手紙を、ほんの少しだけ素直に受け取ってみる。
そんな毎日の積み重ねが、五年後、十年後のあなたの健康をつくります。
だから疲れる。
だから休む。
だから誰かの手を借りる。
それでいい。
東洋医学も、鍼灸も、その「少しだけ支えてくれる手」の一つです。
もし最近、「なんとなく調子が悪い」が続いているなら、そのサインを見逃さないでください。
「まだ病気じゃない。」
それは、体があなたを守ろうとしている証拠なのかもしれません。
体は、あなたを困らせるためではなく、守るためにサインを送っています。




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