治しません。戻る力を支えるだけです。

発達障害のお子さんと小児はりについて書いた、広島・七施鍼灸院のエッセイ「治しません。戻る力を支えるだけです。」のアイキャッチ画像 子育てについて

「発達障害のお子さんも診ます」と言うと、決まって聞かれます。「それ、鍼で治るんですか?」。ごもっともな質問です。親御さんは毎日、子どものために調べ、悩み、動いてこられた方ばかりで、「治る」という言葉にすがりたくなる気持ちは、よくわかります。「治ります」と書けば予約が増えることも、知っています。ただ、私は嘘が下手で、すぐ顔に出ます。ですから「治す」とは言いません。そのかわり、鍼灸でできることを、正直にお話しします。

昔は、落ち着きがない、ちょっとしたことで癇癪を起こす子を「疳の強い子」と言いました。いまは発達特性という見方が広がり、診断も、発達の経過や生活での困りごと、ご家族のお話などを踏まえて、専門の医師が総合的に判断します。見立てが進んだのは大きな前進です。ただ、呼び名が変わっても、目の前の子がしんどそうなのは、昔も今も変わりません。だからこそ、診断や療育が必要かどうかは、まず小児科や発達外来にご相談ください。鍼灸はその代わりではなく、横に並ぶものです。

イライラする。キーッとなる。気持ちの切り替えがうまくいかない。人の気持ちを推し量るのが難しい。どれも、子どもなら誰にでもあることで、表れ方や困りごとの大きさが、その子によって違うだけです。だからといって、それを鍼で消してしまおう、という話でもありません。消すべきものとして扱った瞬間、その子が何に困っているのかが見えなくなるからです。「イライラしない子」を目標にされたら、真っ先に不合格になるのはこの私です。

私が大切にしているのは「戻る力」です。気持ちが固まったり、乱れたりしたときに、その子なりに落ち着きを取り戻す、休む、助けを求める力です。経絡治療は、脈やお腹で体の様子を観察し、皮膚に触れながら、体の緊張や乱れを整えていきます。目的は、気持ちが動かないようにすることではありません。動いて当たり前です。大切なのは、ひとつのところで気持ちが固まってしまったとき、そこから自分で抜け出して、切り替えられること。そのための体の土台を、一緒に整えることです。ただし、これは七施鍼灸院の治療の考え方であって、発達特性そのものへの効果が確かめられた、という話ではありません。そこは正直にお伝えしておきます。(戻る力についても書きました)

治すより、戻る。偉そうに書きましたが、59歳の私自身、むっとすると半日はイライラから戻ってこられません。「戻る力」を語る人間が、いちばん戻れていないのです。大人でもこのありさまですから、子どもに「すぐ切り替えなさい」と求めるのは、ずいぶん酷な話です。ですから親御さんも、「ちゃんと戻らせなきゃ」と力まないでください。小児はりをしながらお子さんの様子を見て、戻りやすい体の状態を一緒に探す。そのお手伝いなら、できると思っています。


広島・府中町の七施鍼灸院は、子育てのお悩み、小児はり、疳の虫、不登校、発達の特性のあるお子さんのご相談をお受けしています。

お子さんの睡眠やお腹の調子、体の緊張、親御さんご自身のお疲れなど、お困りごとを一緒に考える場所でありたいと思っています。発達障害そのものを治すというお約束はできませんが、お子さんの心身の状態に合わせて、できることを一緒に探します。診断や療育が必要な場合は、小児科や専門機関にもご相談ください。初診歓迎・予約優先です。

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