― 人は弱い生き物だから、助け合いながら、なんとか生きている。 ―
「先生は鍼灸師だから、身体のことは何でも分かるんでしょう?」
患者さんから、時々そう言われます。
いえいえ、そんなことありません(笑)。
むしろ年齢を重ねるほど、
「人の体って、思い通りにならないなぁ。」
と思うことの方が増えました。
小児はりをやったり、子育てを吹聴しても、
自分の子育てでは失敗ばかり。
東洋医学を何十年学んでも、
風邪もひけば、ぎっくり腰にもなります。
山に登れば息は切れるし、
ジムへ行けば翌日はちゃんと筋肉痛(笑)。
人は当たり前だけど哺乳類。
頑張ろうと思っても頑張れない日があるし、
眠ろうと思っても眠れない夜があります。
ちゃんと死ぬし、結局は弱い生き物なんですよね。
子どもは言うことをほぼ聞かないし、
親も思うような親にはなれません。
だから私は、
「もっと頑張れ。」
よりも、
「まあ、そんな日もあるよね。」
と言える人でいたいと思っています。
ただ、人は弱いだけではありません。
人には本来、
自ら整い、
回復し、
育っていこうとする力があります。
風邪をひいても治ろうとする力。
骨が折れてもくっつこうとする力。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中で育つ力。
子どもが転びながら大人になっていく力。
人生で何度転んでも、
また歩き出そうとする力。
東洋医学は、その力を信じる医学です。
私たち鍼灸師の仕事は、
その力を作ることではありません。
鍼やお灸を通して、余計な力を抜き、本来の力が働きやすい環境を整えること。
治すのは私ではなく、
治ろうとする、その人自身です。
だから七施鍼灸院では、
「先生、治してください。」
よりも、
「一緒に整えていきましょう。」
という気持ちで施術をしています。
あと、もう一つ大切にしていることがあります。
それは、
「一人で立てる人になること。」
もちろん、全部一人で頑張れという意味ではありません。
一人でできることは自分でやる。
できないときは、ちゃんと助けてもらう。
そして元気になったら、
今度は自分が誰かを助ける。
そんな循環が、
地域に広がっていったらいいなと思っています。
「七施」という名前に込めた想い
「七施鍼灸院」という少し変わった名前には、理由があります。
「七施」は、仏教の教えである無財の七施(むざいのしちせ)からいただきました。
無財の七施とは、
お金や物がなくても、
誰でも今日からできる七つの思いやりです。
一、温かい眼差し。
二、笑顔。
三、優しい言葉。
四、手を差し伸べること。
五、相手を思いやる心。
六、席を譲ること。
七、安心できる場所をつくること。
どれも立派なことではありません。
でも私は、
世の中を少しずつ良くしているのは、こういう名もない親切だと思っています。
鍼灸も同じです。
一本の鍼で人生が変わることは、そう多くありません。
……いや、正直に言えば、ありません(笑)。
でも、
- 昨日より少し眠れた。
- 肩の力が少し抜けた。
- 赤ちゃんのことを少し信じられた。
- 自分を責める時間が少し減った。
そんな小さな変化は、人の人生を静かに変えていきます。
派手ではないけれど、
私は、そんな鍼灸を続けていきたいと思っています。
患者さんが帰る頃には、
「なんとかなるかな。」
そう思っていただける場所。
それが、七施鍼灸院です。


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