「おいしい」を感じるために、少しだけ不便を選ぶ

奥多摩の山歩きと立ち食いそばから考える「少しだけ不便を選ぶ生き方」 治療や健康について

子どもは本当にかわいい。

でも正直に言えば、

寝ない。
言うことを聞かない。
思い通りにならない。

ほとんど自然災害(笑)。

こちらが「今日こそは穏やかに過ごそう」と思っていても、向こうにはまったく関係ありません。

晴れ予報なのに突然のゲリラ豪雨。

はい、それが子どもの標準仕様

でも、不思議なんです。

台風は大変だけれど、台風一過の青空は驚くほど美しい。

冬が寒いから春が待ち遠しい。

夏に汗だくになるから秋風が気持ちいい。

自然の厳しさを知っているからこそ、その美しさにも気づける。

子育ても、案外そんなものなのかもしれません。


子育てで育った適応力
農業や漁業は天気を見て作業を変えますよね
子育ても、それと同じかな、って、、

「今、その子がどんな状態か」に合わせて、毎日を柔軟に過ごす、、


初めて奥多摩を歩いた日のことを今でも覚えてます。

奥多摩で最初に登ったのが鋸山。

奥多摩駅から近いし、

「初心者向けだろう。」

そんな、初心者あるあるの、根拠のない自信で登り始めました。

ところが愛宕神社へ向かう石段が想像以上。

急です。

長いです。

「これ、本当にみんな平気で歩いてるの?」

と心の中で何度もつぶやいちゃってました。

奥多摩の山歩きと立ち食いそばから考える「少しだけ不便を選ぶ生き方」

ところが何度も歩くうちに、いつの間にか怖くなくなる。

人間は慣れる生きものなんですね。

そんなある日、とにかく暑かった。

汗は滝のように流れ、シャツもパンツもびしょ濡れ。

どれだけ水を飲んでも尿が出ない。

「これ、汗しか作ってないんじゃない?」

そう思うほど。

駅で水を買おうと思ったら、ちょうど電車が来たので飛び乗ってしまいました。

喉はカラカラ。

汗まみれの服で座るのも気が引けて、立川まで立ちっぱなし。

ようやくホームに降り立ち、そのまま立ち食いそば屋へ飛び込みました。

その時の天ぷらそば。

今までの人生の中で、一番おいしかったそばです。

特別な店じゃありません。

食べログの星がいくつなのかも知りません。

でも、あの日の私にとって、このそばは五つ星どころか、十つ星。

空腹も、
喉の渇きも、
疲労も。

全てが最高の調味料だったのだと思います。


以前、ある会社の社長さんが話してくれました。

十二月は毎晩のように会食。

しかも、一人数万円もするようなお店ばかり。

「いいですねぇ。」

そう言うと、

「いや、結構つらいですよ。」と苦笑い。

毎日ごちそうを食べていると、ごちそうがごちそうじゃなくなる。

人間って、なんとも贅沢な生きものです。

たぶん私も毎日うなぎが出てきたら、

「今日もうなぎか……。」

なんて、罰当たりなことを言い始めるのでしょう。

もちろん、そんな心配をする予定は全くありませんが(笑)。


先日、宮島の弥山に登りました。

ザックに入れていたのは、フランスの硬度高めのミネラル炭酸水。

汗をかいた身体に流し込むと、

思わず

「うまっ。」と声が出ました。

炭酸がおいしかったのか。

ミネラルが染みたのか。

山を登ったからなのか。

きっと全部です。

身体は正直です。

本当に必要な時には、高級ワインより炭酸水のほうが感動することだってあります。


私たちは、

もっと便利に。

もっと楽に。

もっと快適に。

そんな時代を生きています。

私も例外ではありません。

エアコンは大好き。

エスカレーターも大好き。

ネット通販なんて、便利すぎて怖いくらい使っちゃいます。

夜中にポチッとして、

数日後に届いた段ボールを見て、

「あれ?何買ったっけ?」

そんなこともしばしばです。

便利は素晴らしい。

でも、
便利ばかりになると、

「ありがたい。」
「おいしい。」
「うれしい。」

そんな感覚まで薄れてしまうことがあります。

だから私は時々、

少しだけ不便を選びます。

少し歩く。

少し空腹を感じる。

少し汗をかく。

少し遠回りをする。

すると不思議なくらい、

いつものご飯がおいしくなる。

いつものお茶がありがたくなる。

いつもの毎日が、少しだけ輝いて見えてきます。


東洋医学も、どこか似ています。

身体は快適すぎる環境よりも、

寒暖差や季節の変化、

歩くことや空腹、

そんな小さな刺激の中で育っていきます。

だから私は患者さんにも、

無理は勧めませんが、

「少し歩きましょう。」
「少し早く寝ましょう。」

そんな小さな積み重ねをお伝えしています。

劇的な健康法より、

毎日の小さな不便のほうが、

身体は案外喜んでくれるものなのです。


そして、ここまで書いていて思いました。

この話は、子育てにもよく似てるかな、って。

子どもは本当に手がかかる。

  • 眠らない。
  • 思い通りにならない。
  • 心配ばかり増える。

何度、

「なんでこんなに大変なんだ。」

と思ったことでしょう。

でも、今振り返ると、

あの慌ただしい毎日こそが、一番愛おしい時間でした。

苦労があるから喜びが深くなる。

うまくいかない日があるから、成長がうれしい。

喜怒哀楽をこれほど揺さぶってくれる存在なんて、子ども以外にそうそういません。

親は子どもを育てているようで、

実は一番育てられているのは親なのかもしれません。


「おいしい」を感じるために。

「ありがたい」を感じるために。

「愛おしい」を感じるために。

今日も少しだけ、自分に課題を与えてみる。

少しだけ歩く。

少しだけ遠回りする。

少しだけ汗をかく。

しんどいことの先にある景色を楽しみにしながら。

そうすれば、ずっと味わい深くなる。

そんな生き方って、嫌いではありません。

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