安産を辞書的に調べると、大きな問題や危険なく母子ともに健康に子どもを産むこと、とあります。医学用語ではなく一般的な言葉で、時間の短さや痛みの少なさだけを指すわけではありません。お産にどれだけ時間がかかろうと、最後に母子が元気なら安産と呼べるようで、医療でいう「正常分娩」(病気や異常のないお産)とは微妙に違います。実際に妊婦さんへ聞くと、初産の方は時間や痛みを基準に語り、経産婦さんになると基準が「子どもの元気」へ移る印象です。助産師さんに聞いても、定義がないのが当たり前という顔をされます。安産とは、本人の数だけ定義がある、ということらしいです。
いろいろな人と話すうちに、私は「妊娠する前より、出産後のほうが元気になること」が安産ではないかと思うようになりました。出産後に元気になりすぎて起業した人にも出会いました。「自分がこの子を主体性を持って産んだ」という自負を持つお母さんは、子育ても充実している印象です。ただ、こういう話はSNSで語ると叩かれるので(笑)、私も含め大々的には語りません。すべての人に勧めたいわけでもないので、ピンときそうな方にだけ、個人的に助産院や水中出産の話をお伝えしています。
もちろん、これは私の物語でしかありません。ただ世の中は不安を煽る情報にあふれ、「無痛分娩にすべき」という論調も強まっています。この先、無痛が当たり前になれば、痛みを伴う分娩を「有痛分娩」と呼び、選ぶ人を不思議に思う時代が来るかもしれません。ただ、いろんな選択肢の中で無痛を選ぶならわかりますが、アクティブバースなど他の選択肢を知らされないまま無痛一択、というのは知る権利として気になります。そして、出産という生理現象を最悪の事態として最初から扱う風潮にも違和感があります。毎日の食事を、消化不良を起こす前提であらかじめ胃薬を飲んでからとるようなもの、と言ったら乱暴でしょうか(笑)。
安産の答えは一つではありません。だからこそ、自分にとっての安産を、できれば妊娠する前から考えておきたいものです。誰かに決めてもらうのではなく、自分の言葉で語れるようにしておくといいと思います。無痛でも自然分娩でも、助産院でも病院でも、それぞれに理由があっていい。大切なのは「こうあるべき」に自分を合わせることではなく、「私はこういうお産がしたい」と自分で選ぶことだと思います。お産は、母と子が出会う一生に何度もない出来事です。結果として母子ともに元気で、お母さん自身が「私、よくやったな」と思えたなら——それがきっと、いちばんの安産なのだと思います。
当院では、逆子治療をはじめ、安産のための鍼灸施術を行っています。ご自身にとっての「安産」を一緒に考えながら、出産までの体づくりをお手伝いできればと思います。気になる方は、お気軽にご相談ください。
孫を抱くその日まで元気でいられるように――
「安産」とは、出産そのものだけでなく、「これからの人生を健やかに生きること」でもあるのかもしれません。




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