「疲れているなら休めばいい」
「疲れているなら休めばいい。」
たぶん、一番役に立たないアドバイスです。
休める人は、とっくに休んでいます。
本当に困っているのは、疲れているのに休めない人です。
ソファに座っていても仕事のことを考えている。
休日なのに予定を詰め込んでしまう。
布団に入っても、頭の中だけは会議中。
「私、貧乏性なんです。」
「昔からこういう性格だから。」
そう思っている方は多いでしょう。
でも東洋医学では、少し違う見方をします。
それは、「性格」ではなく、何をしようがしまいが「体が休めない状態になっている」という考え方です。
「休む」にもエネルギーがいる
車はアクセルだけでは走れません。
止まるためにはブレーキが必要です。
でも、ここで一つ勘違いがあります。
ブレーキは勝手にはかかりません。
ブレーキを踏むという行為にも、ちゃんと力が必要です。
人の体も同じです。
「横になれば休める。」
実は、そんなに単純ではありません。
休むことも、一つの能力。
休むことにもエネルギーが必要なのです。
ところが現代人は、
朝起きたらスマホ。
仕事では気を張りっぱなし。
昼休みにスマホ。
帰宅したら家事。
寝る直前までスマホ。
一日中アクセル全開です。
東洋医学では、この状態を「気が上にのぼったまま」と考えます。
- 頭ばかり働き、
- 呼吸は浅く、
- 肩には力が入り、
- お腹は冷えている。
つまり、休めないのではありません。
体がブレーキを踏めなくなっているのです。
車なら整備工場へ持って行くレベルなのに、人間だけは、
「まだ大丈夫。」
と言いながら走り続けます。
人間の「まだ大丈夫」ほど、信用できない言葉はありません(笑)。
実は私も、「休めない人」でした
東京で約20年間、鍼灸院をしていた頃の私は、休むことが苦手でした。
休みは土曜日だけ。
日曜日も患者さんから連絡があれば治療をしていました。
やっと休みになったと思えば、
- 山へ登る。
- 帰宅してブログを書く。
- 筋トレへ行く。
- お酒を飲む。
今思えば、メンタル死んで当たり前の状態でした。
当時は、
「充実している。」
そう思っていました。
でも今振り返ると、充実というより、止まり方が分からなかっただけなのかもしれません。
そのままコロナ禍を迎え、仕事も生活も大きく変わりました。
気づけば、自分で自分を追い込み、身動きが取れなくなっていました。
広島へ戻って七施鍼灸院を始めてからも同じです。
患者さんが来ない。
不安になる。
すると、その不安をごまかすように、
- ブログを書く。
- 勉強する。
- 地域活動をする。
「あれもやらなきゃ。」
「これもやらなきゃ。」
忙しくしている方が安心だったんですね。
自分のことなのに、一番分かっていませんでした(笑)。
頑張り屋ほど、休めない
もちろん、一生懸命働くことは悪いことではありません。
責任感がある。
人の期待に応えたい。
とても素敵なことです。
でも、それが続きすぎると、体は少しずつ休み方を忘れてしまいます。
患者さんからも、よくこんな言葉を聞きます。
「何もしない時間が苦手なんです。」
少し毒を吐くなら、
休めない人って、頑張っている自分が結構好きなんです。
……昔の私もそうでした(笑)。
頑張っている自分には価値がある。
止まっている自分には価値がない。
- 学歴。
- 肩書き。
- 仕事。
- 資格。
- SNSの「いいね」。
知らないうちに、「何かができる自分」に価値を置きすぎているのかもしれません。
だから体が、
「もう限界です。」
と言っているのに、
頭は、
「もう少しいける。」
と命令を続ける。
そのズレが、「なんとなく不調」を少しずつ育ててしまうのです。
「休む」とは、何もしないことではない
「今日は昼まで寝たから休めました。」
もちろん、それも悪くありません。
でも東洋医学で大切なのは、
気が下がり、
呼吸が深くなり、
体が安心できる状態へ戻ることです。
そのためには、
- ゆっくり息を吐く
- お腹や足元を温める
- 寝る30分前にはスマホを置く
- 何もしない時間をつくる
そんな「休むための儀式」が、とても大切です。
最近の私は、部屋を片付けたり、庭の草を抜いたり、土鍋でご飯を炊いたりする時間が、案外いいブレーキになっています。
遠回りのようですが、身の回りを整えることが、自分の体を整えることにつながるような気がします。
何かを足して立派な人になろうとするより、まずは余計なものを減らしてみる。
すると、不思議と必要なものは向こうからやって来ます。
そして鍼灸には、「アクセル全開」の体を「ブレーキが利く体」へ戻すお手伝いができます。
施術中に眠ってしまう方が多いのも、そのためでしょう。
体やっと
「休んでいいんだ。」
と思い出しているのかもしれません。
壊れてからでは、「休む」ではなく「止まる」になる
東洋医学には「未病(みびょう)」という考え方があります。
病気ではない。
でも健康でもない。
その段階で整えていく医学です。
休めない人ほど、
「まだ大丈夫。」
と言います。
でも体には、いつか強制終了ボタンがあります。
- 高熱が出る。
- ぎっくり腰になる。
- 朝、布団から起き上がれなくなる。
それは体からの最後通告なのかもしれません。
広島県安芸郡府中町の七施鍼灸院では、症状だけでなく、その奥にある「休めない体」にも目を向けながら施術を行っています。
本当に元気な人は、頑張れる人ではありません。
ちゃんと休める人です。
東洋医学は、その「休む力」を取り戻すお手伝いをする医学でもあります。
もし最近、「疲れているのに休めないな」と感じているなら、一度、ご自身の体の声に耳を傾けてみてください。
体は、いつも正直です。
そして、人はそんなにすごい生き物ではありません。
- だから疲れます。
- だから休みます。
- だから誰かの力を借ります。
それでいいのだと思います。
人はそんなにすごくない。
でも、だからこそ助け合いながら、なんとか生きていける。
私は、東洋医学も鍼灸も、そんな人間らしさに寄り添う医学なのだと思っています。


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