ボールからトゲは生えません|鍼灸師の反省文(第6回まるっとお結び会)

よく眠れるのはちょっと薄情だからかもしれないというエッセイのイメージ画像。パジャマ姿で眠る鍼灸師と、悩みを処理する無意識さん 子育てについて

9月6日、府中町のさくら会館で第6回「まるっとお結び会」が開かれました。ご家族7組にスタッフを加えて、総勢25名。鍼灸師歴30年近く、来年還暦というそれなりの貫禄(自称)の私が、今回は30分の健康講座を担当。雨の日の「だるい・頭が重い・むくむ」を、東洋医学の「湿(しつ)」という考え方からお話ししました。ツボにお灸をすえ、ペアで背中をさする。温めて、触れる。我ながら、実に鍼灸師らしい仕事です。ここまでは。会全体の様子はくぬぎ助産所のレポートに譲るとして、こちらはその舞台裏。貫禄を自称していた鍼灸師が、その日のうちに地に落ちた一部始終です。

講座が終われば、お昼ごはん。炊いたご飯は18合。もはや炊き出しレベル(笑)。食べ終えた子どもたちは、即座に遊びへ。初対面でも、食べて遊べばすぐに友達。大人が「まずは自己紹介を……」なんて段取りを踏んでいる間に、子どもたちはもう追いかけっこ。人間関係の構築速度では、ベテランのはずの大人が完敗です。そして私はといえば、子どもに遊んでもらう係。今回も「とろけるパンチやって!」とリクエストをいただきました。以前、私が適当に始めた得体の知れない遊びを覚えていてくれるのは、素直に嬉しいものです。

そんなこんなで調子に乗った私は、トゲトゲのゴムボールを手に、子どもたちに言いました。「これね、寝ている間におまじないをかけると、トゲが生えてくるんだよ」。返ってきたのは「そんなん絶対ウソ!」。さらに「くそうそつき!」とまで。ついさっき「湿とはですね」と神妙な顔で語っていた同じ口から出た言葉とは思えません。還暦目前の貫禄、開始数時間で粉砕されました。あとでスタッフに聞くと、その子は「コレ、本当にトゲ生えてくるん?」と何度も確認していたそうです。大人の言うことを鵜呑みにせず、「それ、本当?」と確かめる。実に健全です。健全なのは子どものほうで、怪しいのはどう見ても大人のほうでした。私がやったのは、ボールからトゲが生えるという正真正銘の大嘘です。

小児はりもやっている身として、「嘘つき」と認定されるのは営業上なかなか痛い(笑)。ただ、身体の相談というのは、いきなり鍼を打つことより、「この人なら話してもいいかな」と思ってもらうことのほうが、よほど大事だったりします。眉間にしわを寄せて経絡の話をしているだけが、鍼灸師ではない。子どもとくだらないことで笑ったり、一緒にご飯を食べたり、ときには「くそうそつき!」と断罪されたり。そんなところから、人との距離が近くなることもある。……と、これは言い訳ではなく、たぶん信念です。信頼を積み上げているのか、盛大に崩しているのかは、いまだ判定不能ですが(笑)。

健康講座におむすび、子どもと遊び、かき氷、そして最後は童謡でしめくくり。鍼灸師としての振れ幅と沽券の落差が大きすぎて、自分でも心配になります。それでも、身体のことを知る。誰かと触れ合う。一緒にご飯を食べる。くだらないことで笑う。そんなささいな一日の積み重ねから、人との距離は少しずつ縮まるのだと思います。次回の「まるっとお結び会」は11月1日(日)の予定。おむすびは焼きおむすびか、お稲荷さんか、まだ未定。私が講座をするのか、また子どもたちに捕まり沽券を失うのかも未定ですが、後者の確率がかなり高そうです。七施鍼灸院で私が妙に子どもっぽい顔をしていたら、この日の修行の成果だと思ってくださいませ。


食べて、笑って、触れ合って|第6回まるっとお結び会を開催しました🍙 | くぬぎ助産所
9月6日、第6回「まるっとお結び会」を開催しました。お灸教室と背中をさすり合うタッチケア、みんなで作るおむすびランチ、自分で作るかき氷まで。子どもも大人も笑顔いっぱいの一日をレポートします。次回は11...


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