子どもに教わった「聞く力」|治療家として忘れたくないこと

考えていることについて

先日、家族LINEに次男から結婚式の動画が送られてきた。なんでも友人の披露宴でスピーチを頼まれたらしい。その友人は家族全員が知っている子で、隣に映る素敵な女性と一緒になったのかと思うと、なんだか感慨深い。遠方にいる次男とはなかなか会う機会もなく、こちらの記憶は小さい頃のまま止まったままだったが、動画に映る次男はすっかり大人の顔でスピーチをしていて、こんな一面もあったのかと驚かされた。結婚式のスピーチという場を通して、知らなかった息子の顔を垣間見ることができるとは、親として何とも嬉しい限りである。

スピーチの中身がまた良かった。BUMP OF CHICKENが好きで、朝までカラオケをした思い出。良い時もしんどい時も、いつも変わらず寄り添ってくれた友人への感謝。「家族や周りのためにここまで親身になれる人はなかなかいない、本当に尊敬と感謝しかない」と、照れもなく相手を絶賛していた。私の前では絶対に見せない語彙力と素直さを、マイク片手に堂々と披露する次男。育ち方、間違ってなかったかもしれない。たぶん。

これを見た長男が家族LINEに「最近『本日は、お日柄もよく』(原田マハ著)を読んでスピーチに興味持ったからタイムリーすぎた」と投下してきた。長男が本を読む。しかも小説を。高校時代のゲームに漫画三昧の印象しかない私は、正直「え、誰?」となってしまった。子どもたちのことを知っているようで、実はまったく更新できていない自分に気づかされる。親のアップデート機能、明らかに不具合あり。ちなみに私もその本、フォレオ東のブックオフで買って途中で積んでいたのを思い出し、慌てて読み始めた。原田マハはやっぱり面白い。長男よ、積読崩しをありがとう。

ところで、この作中に「リスニングボランティア」という、お年寄りの話を聞く活動が出てくる。「聞くことは、話すことよりもずっとエネルギーがいる。だけどその分、話すための勇気を得られるんだ、と思います」という一節に手が止まった。理解、承認、配慮。人は、ちゃんと聞いてもらえるから話す気になる。質問とは情報収集ではなく、「あなたの話をちゃんと聞いていた」という証拠なのだと。

これを読みながら、治療中の自分を振り返ってみる。患者さんの話、ちゃんと聞けているだろうか。気づけば自分の近況やら子どもたちの話やらを延々語っていないか。……はい、心当たりしかありません。次男のスピーチにも長男の読書にも、正直かなわないなと思う。だからこそせめて「聞く力」だけは、明日からの臨床でこそ発揮したいと思う。息子たちに負けていられない、還暦間近のジジイの戯言だが。

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