昔は地域で寄ってたかって子育てしてきたわけで

子育てについて

昔の日本では「子育ては地域全体の仕事」という共通認識がありました。生みの親だけでなく、取り上げ親・乳付け親・名付け親・拾い親など、さまざまな「仮親」が存在していたのは本当に興味深いところです。

こうした仕組みがあったからこそ、お母さんが孤立することはほとんどありませんでした。

佐野賢治著『ヒトから人へ』によると、かつての日本社会では血縁ではない親子関係も“当たり前”に含まれていたとのこと。

ここで一つ大事なことは日本の社会では親子という関係には非血縁、血のつながらない親子関係も含まれるということである。(佐野賢治著「ヒトから人へ」)

出産の場面だけでなく、子どもが大人になるプロセスでも、血のつながらない親をつくる民族慣行が存在していたそうです。


■ 乳幼児死亡率が高かった時代の子育て

江戸時代、江戸近郊の女性が生涯に産む子どもの平均は4〜5人。しかし、医療がまだ発達していなかったため、乳幼児死亡率は生後1年までで20〜25%。
4人産んでも1人が無事に育つかどうか分からないーーそんな時代でした。

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出産は喜びと同時に穢れ(けがれ)でもあった。出産方法や産後のケアなど、現代とはちがう江戸時代の常識をご紹介します。

子どもを大切に育ててコミュニティを維持するためには、実の親だけでは抱えきれないことも多く、だからこそ周囲の大人たちが「仮親」として支え合う習慣が生まれていました。(佐野賢治著『ヒトから人へ』)

日々の労働に追われ、加えて栄養や衛生状態の好くない時代においては、実の親が我が子に幾ら愛情を注いでも、肉親だけで子供を育てるのは大変なことであった。子供は実の親だけでなく多くの仮親に囲まれて育っていった。
(佐野賢治著「ヒトから人へ」)

乳幼児死亡率が高かった時代、コミュニティを維持するためには一人一人を大切に育てなければいけません。

■ コミュニティのそこら中に“親”がいるということ

道を歩けば、どこかに何らかの“親”がいる。
そんな環境で育つ子どもは、多くの大人に見守られ、自然と悪いこともしづらくなります。
「子どもは地域全体で育てるもの」という価値観が、今よりずっと当たり前に息づいていた時代でした。

「だれのお陰でこんなに大きくなったのだ」という言葉も、もとは神仏の加護や血縁・地縁の人々への感謝を含んだ言い回しでした。
ところが時が経つにつれ、その言葉は“親の苦労を想え”という意味合いへと変わってしまったのです。
(佐野賢治著『ヒトから人へ』)

成長した子供に対する親の「だれのお陰でこんなに大きくなったのだ」という言い方が、かつてはその意識に当然、神仏の加護や血縁・地縁の人々の顔が重ねられていたはずなのに、時が経つにつれ、実の親の苦労に思いをいたせとの意味に変わってきた。
(佐野賢治著「ヒトから人へ」)

地域のあちこちに“親”がいる状態。
子どもを寄ってたかって育てる習慣。
それに比べ、今は親子が孤立しやすく、どちらが良いのか時々わからなくなるほどです。

本来、人間はコミュニティの中で育ち合う存在です。
それなのに、どこかの時代で何かを失い、子育てがとても難しいものになってしまいました。
そして、その流れを元に戻すのは決して簡単ではありません。

それでも、かつての「仮親」という仕組みを思うと、ヒントがたくさんあります。
地域にはいつも何かしらの“親”がいて、子どもは常に誰かに見守られていたーー。
そういう環境なら、子どもだって大人だって、そうそう悪さはできません。


■ “仮親”の種類と役割

子どもを社会全体で育てるための仕組みは多岐に渡り、地域の文化が色濃く表れていました。

  • 取り上げ親:出産の際に赤子を取り上げた人。その子の生死を預かる大切な存在。
  • 名付け親:本家当主、神主、僧侶、教師などが務めた。
  • 拾い親:厄年に産まれた子を“拾う”役目。健やかな成長を願う儀式的役割。
  • 乳付け親:初乳を別の母からもらうと良いとされ、性別によって乳母が選ばれる。
  • 守親:子守を担当する人。伊豆諸島や宮古島では、子守をした人との間にも仮親関係が生まれる。
  • 烏帽子親:元服の際に烏帽子をつけ、名を授ける人。将来を託す存在。
  • 鉄漿親(おはぐろ親):初めてお歯黒をつけるときに世話をする女性。
  • フンドシ親:思春期の男子へふんどしを贈り、性教育を担う立場。
  • 宿親:若者宿・娘宿を管理する大人。人生の師であり仲人にもなる。
  • 筆親・針親:寺子屋や裁縫の師匠。

こうした“仮親”たちの存在は、子どもが多くの大人に見守られ、社会の中で育つという日本の伝統的な子育て観を象徴しています。


■ では今の社会はどうか

現在、子育ては家族だけに重くのしかかり、母親や父親が孤立しやすい時代になっています。
行政の支援や地域活動が少しずつ広がってきたとはいえ、まだまだ「昔のような“寄ってたかって育てる”文化」に比べると遠いのが現実です。

ただ、江戸時代の子育てを見ると、行政がどう関わり、私たちはどう寄り添うべきかーーそのヒントが多く隠されているように思います。

おおしたさん
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この記事を書いた人

鍼灸師,あん摩マッサージ指圧師 /東京では小児はりや妊婦さんを多く手がけていました /特に逆子は2200人以上を経験 /広島県安芸郡府中町出身 /青年海外協力隊にてパナマ派遣 /2024年6月まで外苑前で鍼灸院を20年経営 /子ども4人はすでに成人

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