久しぶりに、甲田光雄先生の著書『現代医学の盲点をつく』を読み返してみました。
大学を卒業し、農業実習をしていた時にたまたま読んだこの本に感銘を受け、甲田先生に手紙を書き、八尾市にあった甲田医院で10日間の断食を体験させていただいたのは、今でも忘れられない思い出です。
今回この本を紐解いたのは、「温冷浴」の手順をもう一度確認したかったからです。
温冷浴とは
温冷浴は水浴と温浴を交互に繰り返す健康法のことです。
皮膚を鍛え、血液循環を促し、新陳代謝を高める、といった感じの効果があり、西式健康法の中でも実践的な健康法の一つです。
現代では「リラックス」がキーワードのように言われますが、実は“リラックスするためには、一度身体をいらだたせること”も大切です。
甲田先生は著書の中でこう述べられています。
私たちの体液は温浴によってアルカリ性に傾き、冷浴によって酸性に傾きます。また冷浴は交感神経を刺激し、温浴は迷走神経を刺激します。そこで、冷浴と温浴とを交互にくり返しておこないますと、体液が中性に寄ってきて、自律神経を拮抗状態に保持することになり、これがやがて、全身の健康を増進することになるのです。
水シャワーと温シャワー
断食を経験したのは、私が二十代半ばのころ。
2月の一番寒い時期でした。
断食中で体力も落ち、どれだけ着込んでも寒さをしのげず、四六時中震えていたあの頃。
その中で行った温冷浴は、正直かなり過酷なものでした。
断食や温冷浴など、今思えばとても貴重な経験をさせていただきましたが、あまりに厳しく、結局その後は「硬いところで寝る」くらいしか、西式健康法を続けられずにいました。
それから年月が経ち、鍼灸師になって訪問治療が増えはじめた頃のことです。
まだ冬というほどではない、少し肌寒い季節。
訪問先で手が冷たくて仕方がなかったあの日、ふと、あの温冷浴のことを思い出しました。
ホッカイロを握っても、温かい缶コーヒーを持っても、どうしても手が温まらない。
そんなとき、「そうだ、あれをやってみよう」と思い立ち、シャワーを使って温冷浴を始めてみたのです。
最初の水シャワーは、それはもう冷たく感じました。
でも、何日か続けていくうちに、驚くほど体が変わっていきました。
なんと、手足がポカポカするようになっていったのです。
そのほかにも、疲労回復が早くなり、夜はぐっすり眠れるようになり、風邪もほとんど引かなくなりました。
秋口には寒くて震えていた水も、何年も続けているうちに、今では冬でも気持ちよく感じられるようになりました。
温冷浴の方法
湯の温度:41〜43℃
水の温度:14〜15℃
(ちなみに銭湯の水風呂はおおむね19℃前後なので、この温度はかなり冷たく感じます)
手順は次の通りです。
1分間の水浴
1分間の温浴
→これを交互に行い、最後は水浴で終わります。
回数は7回ほどが理想的です。
始めるなら、今の季節がちょうど良いかもしれません。
水風呂のあるスーパー銭湯に行った際には、ぜひ温冷浴を7回ほど繰り返してみてください。
体の芯からポカポカしてくるのが、きっと実感できると思います。
リラックスとは「快と不快を大きく揺らすこと」
「リラックス」とは、単に副交感神経を優位にすることではありません。
一度、交感神経を刺激し、そのあとに副交感神経を働かせることで、振り子のように自律神経の“揺らぎ”をつくる。
そこに本当のリラックスがあると私は考えています。
冷たい水で交感神経を刺激し、温かいお湯で副交感神経を働かせる。
この交互の刺激によって神経のバランスが整い、睡眠の質やメンタルの安定にも良い影響があるように感じています。
グローミューと皮膚刺激の大切さ
ところで、甲田先生の本にも登場する「グローミュー」という言葉。
これは、毛細血管を通らずに小動脈から小静脈へ直接つながる血管のことです。
皮膚への刺激は神経を介して脳へと伝わります。
つまり、皮膚を鍛えることは、自律神経を整えることにもつながるのです。
温冷浴はまさに、自律神経を整え、体を芯から温めるための自然で効果的な方法だと私は思っています。
最後に
冷たい水に入るのは、たしかに少し勇気がいります。
でも、一度その心地よさを体で感じると、銭湯に行くたびに「またやってみようかな」と思えるはずです。
「温冷浴はちょっとハードルが高いな…」という方もご安心ください。
七施鍼灸院では、自律神経を整え、体の芯から温める鍼灸ケアを通して、「冷え」「睡眠の質」「疲労感」などの改善をサポートしています。
体の内側から整う感覚を、ぜひ一度体験してみてください。


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