軽さが導く深い効果

経絡治療は軽い押し手で

鍼灸における触診、とくに経絡治療では、皮膚に触れているかいないかというほどの、ごくごく軽いタッチが求められます。

というのも、皮膚を押さえつけるように触れてしまうと、皮膚本来の感覚が鈍くなり、そこから伝わってくる繊細な情報を感じ取れなくなってしまうからです。

この「軽さ」は、触診に限らず、鍼を刺入する場面でも非常に重要です。鍼を持つ手よりも、むしろ鍼を支える側の手――右利きの方は左手ですね――の使い方が治療の精度を左右します。

この支える手が患者さんに「重い」と感じられてしまうと、皮膚からの情報を読み取ることはできません。だからこそ、手を置くときは、まるで触れているかどうか分からないほどの「ふわり」とした軽さが必要になります。

加えて、刺入時に親指と人差し指で作る輪――鍼灸では「押し手」と呼ばれる部分――の角度にも注意が必要です。この押し手が皮膚に対して水平になっていること。そして、鍼が押し手のどの位置から出てくるのかを明確にイメージしておくことも大切です。

さらに、鍼管を使わずに刺入する技術も習得しておくと、治療の幅がぐっと広がるでしょう。

もちろん、現代医学の知識や科学的な学びは非常に重要です。ですが鍼灸は、そうしたロジックだけで成り立つものではなく、「気」や「陰陽」、「五行」といった東洋医学の視点を取り入れることで、より深い効果が引き出されるものだと感じています。

エビデンスを否定するつもりはありません。ただし、それが本当に自分の臨床にとって有効なものなのか、実際に自分の手で試して確かめてみることが大切だと思います。どんな情報であっても、ただ鵜呑みにするのではなく、自ら体験し、検証していく姿勢が必要ではないでしょうか。

とはいえ、こうした世界観は、すべてを理論や数値で割り切ろうとする方にとっては、やや理解しづらいものかもしれません。

正直なところ、私自身も「気」とは何か、まだ完全には掴みきれていません。ただ、それを意識しながら施術を行うと、どういうわけか治療効果が高まるのです。だからこそ私は、これからも経絡治療を大切にしながら、地に足のついた実践を重ねていきたいと考えています。

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