子どもは「触れられること」で育つ
人間は二足歩行をするために骨盤が狭くなり、一方で胎児の頭は脳の発達によって大きくなります。
そのため、小さな骨盤から大きな頭を通すのは大変で、人間の赤ちゃんは哺乳類の中でも特に「早く」生まれなくてはならなくなりました。
本来ならもう少しお腹の中で育ってから生まれるはずが、外の世界に早く出てくるわけです。
だから生まれてからしばらくの間は「胎内の延長のように安心できる環境」を整えることが大切になります。
その中で最も欠かせないのが 「触れること」 です。
触れられることで子どもは安心する
研究でも、触れられることで子どものストレスは和らぎ、心身の発育に良い影響を受けることが分かっています。
昔の母親たちは、それを本能的に理解していたのでしょう。
東洋でも西洋でも「子どもを肌身離さず抱いていた」という記録が残っています。
そばに人の温もりを感じることで、子どもは「自分は守られている」という安心感を得ることになります。
その安心の中で、共感や愛情を育む力が養われていくのです。
逆に、十分な愛情の根を育めないまま外の世界に放り出されると、不安や反抗心が芽生えやすくなるとも言われています。
「疳の虫」と触れること
70代の患者さんと「疳の虫」の話をしたことがあります。
二人のお子さんがまだ独身だった頃から治療をさせていただいていた方で、今ではお孫さんとも仲の良い素敵な方です。
その方の言葉がとても印象に残っています。
「子どもに何か問題を感じたら、まずは三日間、片時も離れず一緒に過ごしてごらんなさい。それでも落ち着かなければ、何か別の問題があると考えていいのよ」
これは本当に真理だと思います。
触れ続けるだけで、子どもは驚くほど落ち着きを取り戻すことがあるからです。
抱っことおんぶの子育て
私は三人の姉がおり、五人の甥や姪がいます。
皆すでに30歳を超え、家庭を持ち、子どもを育てています。
幼い頃から甥や姪が大好きだったので、自分の子どもたちにも同じように育ってほしいと願い、姉たちの子育てを大いに参考にしました。
その影響もあり、自然と「触れ続ける子育て」をしてきたように思います。
昔は家事や仕事をしながら、抱っこやおんぶで子どもと一緒に生活するのが当たり前でした。
親子の距離がとても近く、愛情が自然に伝わる環境だったのです。
今では「抱っこしてくださいね!」と機会を見て声をかけるようにしています。
当たり前のようでいて、実はとても大切なことだと思うからです。
昔の知恵を今に生かす
海外の育児法から学べることも多々ありますが、明治時代に来日したアメリカの動物学者エドワード・S・モースが驚いた、日本の昔ながらの子育てにも素晴らしい知恵があります。
もう一度その価値を見直し、今まで以上に子どもをいっぱい抱きしめる子育てを大切にしてもらえたら嬉しいです。


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